寺本愛    『Devotion』
AI TERAMOTO EXHIBITION    'Devotion'
7.7(Fri) - 8.26(Sat)
@Faro Aoyama

展覧会タイトルである“devotion”は、献身・傾倒・信心などを意味し、キリスト教では日々聖書を読み、祈り、黙想する習慣を意味する語として用いられます。 改めて「死」や「救済」と向かい合った寺本は、前回の個展“Pilgrims”のテーマである「祈り」「信仰」の姿を引き継ぎながら、キリスト教が日本に伝来した16世紀頃の日本人信徒や、その後の禁教下で特殊な変化を遂げたカクレキリシタンが持つ、キリスト教文化圏と非キリスト教文化圏の融合と同化が作り出した異国感と独自の存在感にインスピレーションを受けて制作された新作を展示します。 また、会期中のイベントとして、寺本による公開制作(7月18日-7月20日)に加えて、寺本自らがママとなってみなさまをおもてなしする”スナック愛”と、book pick orchestraの川上洋平氏が本との出会いの場をつくるイベント”sake to books”のコラボレーションイベント”愛とSAKE TO BOOKS”(8月19日)を開催します。


Q. 大学から現在までのキャリアについて教えてください。

Ai Teramoto)   大学に入るまでずっと趣味で絵を描いたりしてはいたんですが、絵を仕事にするとかを真剣に考えてはいませんでした。それでなんとなく興味を持った空間演出デザイン学科に進学しました。そこでは内装や照明、ファッションなど色々なカリキュラムがあり、最終的にYAB-YAMのパトリック・ライアン氏のゼミに入り指導を受けました。在学中は演劇にも興味を持つようになって、大学2年生からは演劇のサークルで役者をやっていました。でも3年生になってくると、そろそろ将来のこと考えて手に職つけないといけないなとか思い始めて(笑)。役者ではなく、フライヤーデザインとかで関わっていこうと思ったんです。それで素材として変な目の女の子を描いてみたら評判が良くて、自分でもちょっと面白くなってきて。それからどんどん描いてみようと思ったのが、始まりです。

©Ai Teramoto


Q. キャリアの分岐点だったと思える瞬間はいつでしたか。

Ai Teramoto)   やっぱり2013年の第9回グラフィック「1_WALL」でしょうか。大学3年生の時に描いたキャッチーなスタイルの作品に、大学で学んだファッションの要素をミックスしたスタイルはそのころ出来たものですが、表面的なものでしかなく、自分が何を描きたいのかまだ深く考えられていませんでした。そんな状態のまま勢いで応募した結果、運良くグランプリと一年後の個展開催の機会を頂いたので、それからの一年間は集中して自分と向き合い、制作に取り組みました。普通だったら数年かけて自分のテイストをゆっくり形作ってくのかもしれませんが。2014年の個展「PERMANENT CULTURES」で何とか作家としてスタートラインに立てたような気がします。結果的に、私は運やタイミングがよかったんだろうなと思います。

©Ai Teramoto


Q. 強い光を放つ「目」のアイデアはどこから生まれたのでしょうか。

Ai Teramoto)   一番大きく影響を受けたのは、横山裕一さんです。横山さんの作品を初めて見たのは、2007年の六本木クロッシング。彼が漫画で描いている登場人物の目が、シンプルな描写でギラギラと輝いているのがすごく印象的で、人なのかそうじゃなのかわからないような。私もそういう人物を描きたいと思ったのがきっかけでした。

Q. 目や表情で人物にオリジナリティを与えようとは思わなかったのですね。

Ai Teramoto)   最初はもちろんそういう意図がありました。浅はかですが。いまは目や表情はひとつの要素でしかありません。やはりパトリックさんから学んだことが大きいです。しかし影響も強かったので、最近になってやっと良い距離感を取れるようになった気がします。お二人に出会えていなかったら、今のような作品は描けていなかったと思います。


Q. これまで描いたなかで、一番大きな作品はなんですか。

Ai Teramoto)   卒業制作で描いた、120号の5枚シリーズです。いまのスタイルに近いもので言えば、「PERMANENT CULTURES」シリーズで棺桶のようなものを描いた80号の作品です。

Q. どんな紙を使っていますか。

Ai Teramoto)   普通の画用紙を使っていますが、ボコボコ過ぎるので、もうちょっと平滑なほうがいいような気もしています。でもまず今回の展示ではこれでやってみて、この展示が終わったら次は紙を変えてみたりと、段階をゆっくり踏んでいこうかと思っています。

Q. 手を使ってストロークで描く作家は、サイズによって表現が変わりますよね。いま自分に一番合っていると思うサイズはいくつでしょうか。

Ai Teramoto)   8号のサイズが、いま一番私に合っていると思います。でも、大きい作品への憧れは常にあります。

©Ai Teramoto


Q.モデルにポージングをさせて描くことはありますか。

Ai Teramoto)   モデルさんがいると嬉しいですけど、自分でやったほうが早いです。体型もスタイルの良すぎない、普通の生々しい体型がいいですしね。

Q. 寺本さんの作品で描かれている人物は、必ず全身が収まっているという構図ですね。

Ai Teramoto)   私はもともとファッションが描きたい気持ち、服への興味で絵を描き始めたので、全身が見切れなくて背景の無い絵が多いんだと思います。

Q. どんな音楽を聞きながら描くことが多いですか。

Ai Teramoto)   バラバラですね。今日はハーパース・ビザールを聞いてました。他にも落語やラジオとか、色々です。最近は山下達郎と野球中継をよく聞いています。

Q. 友人を呼んで描くことはありますか。

フリーのデザイナーをやってる友人達と事務所を借りようか、という話もありましたけど…。私は人がいると集中出来なそうです。

Q. 今回FAROで制作風景の公開も予定されていますよね。

Ai Teramoto)   集中できるか不安です(笑)。そうですね…、映像にはぼんやりと興味を持ち続けています。そういう方もいたら面白そうですね。


Q.今回の個展「Devotion」について伺います。今シリーズでテーマにしている場所と時代について教えてください。

Ai Teramoto)   今回は、16世紀後半のキリスト教伝来直後の雰囲気、その後に訪れる隠れキリシタンの時代からインスピレーションを受けて制作を始めました。宗教画などもイメージしています。

Q. 人物像の気持ちや心境が強く表れているような気がします。この変化には何か理由があるのでしょうか。

Ai Teramoto)   これまでは、「服を着て生活をしてる人物」を描くという表面的なことしか考えていなくて、その人物が何を想って、何を求めて生きているかという内面まではあまり考えていなかったんです。きっかけは去年「Pilgrims」でお遍路をテーマに描いた時に感じた、人間の祈る姿に対するシンパシーでした。ちょうど自分の身の回りでもいろいろあった時期だったので、そういう気持ちが絵と繋がったのかもしれません。今回の「Devotion」ではそれがより強く出てきたのかなと思います。


Q. 今回の制作で、新しいスタイルの発見はありましたか。

Ai Teramoto)   今回のシリーズは、初めて鉛筆だけで描いてみました。これまでの作品は主線にペンやインクを使ってきましたが、ずっと違和感があったんです。もともと私は漫画的な表現から離れたいという気持ちがあったのに、なんでインクとか漫画寄りの画材を使っていたんだろうって。自分の目指すテーマと画材があってないことにだんだん気づき始めたんです。去年の個展でも、遍路や救済や祈りなど、そういう純粋性を追求するテーマを表現しているのに、漫画っぽい画材で描くと、仕上がりが軽すぎるような気がしていました。また漫画の完成は「印刷」ですけれど、私は「原画」が完成形です。そういったいくつもの矛盾を感じていて、だったら全部鉛筆で描いたほうがシンプルで雑味がないんじゃないかと思い立って。それでインクを一切使わずに描いてみたら、とてもしっくりした気分で描けています。

Interviewed by Someonesgarden

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